河童の傷薬
じゅりんブログの検索キーワードに常に上位ランクインしていた
天狗の詫び状がふと気づいたらランキング圏外。
ん・・・ここはひとつ妖仲間の河童に頑張ってもらおぅぅ。
ってなワケで、(すんごくベタな・・) 河童ネタ。
河童の傷薬のお話は全国各地にありますが
伊豆にもあるんですョ
むかしむかし天城湯ヶ島(今の伊豆市)の雲金小塚あたりに
相磯主水守清さんというお医者さまが住んでいました。
もとは武田の軍医でしたが、引退し湯ヶ島の地に移り住んで
地域住民に医療を施しながら暮らしていたそうです。
その相磯先生が川向こうの集落へ馬で往診に赴いた帰り道のことでした。
川を渡りかかったそのとき突然馬が暴れだしました。
先生は手綱を引いて急ぎ川を渡ろうとしましたが馬は何かに足を取られているようで
どうしても前に進むことができません。
水面を覗き込むと もがき暴れる馬の足をしっかりと掴んでいる細い手のようなものが
見えました。
「さては噂に聞く河童の仕業か?このままでは川の中へと引きずり込まれてしまうぞ。」
すぱん。腰刀一閃、先生が水中の腕を断ち切ると馬は勢い良く岸に駆け上がりました。
「危ないところじゃったわい。しかし河童の腕とは・・なんともめずらしい。」
先生は早瀬にのって流れ去ろうとするその河童の片腕を拾いあげ、家へと持ち帰りました。
その夜更け、トントン。戸をたたく音に急患かと相磯先生が戸を開けると
そこには片手のない一匹の河童がしょんぽり立っていました。
「どおか我が腕返してくだされ。
片腕では上手く泳げず 棲み処へも帰れぬ上に魚も満足に獲ることもできませぬ。」
「もう悪さをしないというなら返しても良いが・・しかし切れた腕は元のようには戻るまいのぅ」
先生が差し出した腕を河童は嬉しそうに受け取り言いました。
「我ら河童にはどんな傷をもたちどころに治すにも妙薬があるのです。」
「ほほぅ。」
先生は腕を返したそのお礼に河童の軟膏の調合法を教わりました。
河童の言った通りに材料を調じ軟膏を作ると、その効果は覿面。
相磯先生はここ湯ヶ島・小塚の地名から名をとって
「小塚のきず薬」とその軟膏を呼んで処方するようになりました。
この河童の良薬のうわさを聞きつけて訪れる外来は後を絶たず、
小塚のきず薬と名医相磯の名は近隣諸国にも知れ渡ることとなり
河童の伝説とともに相磯家相伝の秘薬として伝えられたそうです。
おしまい。
●参照文献/「天城の史話と伝説」、「伊豆のむかし話」
ちなみに
相磯の末裔は今なおこの地にご健在ですが
秘薬の調合秘伝は残念ながら伝わってないそうです~~ちゃんちゃん♪
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